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執筆者の写真Nobuhiro Kawai

つづく風景

私たちが山口さんと出会ったのは、葉が色づく前の2006年秋のことでした。

 ある知人から紹介され、団地の造成がこれからという時に、庭の移転を頼まれたのです。

 こういう話なら、ごくごくありふれた話ですが、すこしだけ違ったのが、

 いまも尚、私たちの風景づくりがつづいているという点です。

2007〜 山口邸

機関庫川のほとりに位置する山口さんの家は、西に小川が流れ、南正面には今では大きな公園が造られています。

そのような、最高の場所にどのような庭をつくればいいのか、わたしには、わかりませんでした。

わかるはずもありません。

その当時、現場を任されていた私には、経験もなければ、知恵もなかったのですから。

きっと、山口さんはわかっていたと思います。

それから、

毎年毎年、私は山口さんのしたいこと、考えていること、いろんなことを聞いて、

たくさん教えてもらいました、勉強させてもらいました。

その中の一つに、5年10年かけて、つくりあげる。

それまでの、つくり方は短期間でつくる。が基本でした。(少なくとも私の会社では)

それが、毎年同じ場所に来ては、つくっていく。

すこしづつ。

山口さんは、それを見てはいつも楽しんでいます。

「ディズニーランドみたいだね」

毎年移り変わる風景をこのように表現したのです。

なるほど。

あの秋の日から今までに、私はたくさんのことを経験しました。知恵もすこしだけ付きました。

そして、ようやくこの場所にどういう風景をつくればいいかがわかったのです。

私たちと山口さんの風景はもうすぐ完成です。

とは、いっても

カタチだけ。

毎年、私は、葉が色づく頃になると山口さんに会いに行き

「今年の紅葉は、色が・・・」などともみじで楽しんでいます。

風景に完成はありません。

四季で移り変わる風景に完成はないのです。

永遠につづくのです。

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